住宅を造る
地方設計事務所による住宅造りの流れと、我々の姿勢・役割そして考え意図する事。
〜中島の家(兄の家)〜の設計・監理を通じて。
1.始めに
★周囲・周辺状況・敷地形状を考慮した配置計画
★導線・つながり等、使用勝手を考慮した間取り計画
★日照・通風・効率等、居心地を考慮した空間計画
★省エネ・耐久性・拡張性を考慮した構造計画
★立地条件・環境・伝統・様式に配慮した形態計画

  これに、建築基準法等法的規制を加えた各項目でデザインの50%は決定されると思う。
機能面から生まれる骨格デザインである。加えて、

☆屋根・庇・窓・等の位置形状によるバランスの検討
☆パーゴラ・デッキ等附帯施設及び装飾の検討
☆仕上げ材の質・形状・柄・カラー及び素材の検討
☆住設及び各種建築設備の方式・勝手・機能の検討
☆駐車場・駐輪場・サイン・植栽等外構バランス検討

  これで、全体計画デザインのほぼ90%決まる。デザインのスタイル・イメージは、押し付けでなく少しでも施主の思いを表現しようと心がけている。常に資金計画に乗っ取った予算との葛藤である。
全体外観
2.いきさつ
  それは、平成11年9月24日の台風18号に始まった。樋は飛び、瓦はずれ、家の窓ガラスも割れた。それでも辛抱して補修した。程なく今度は汚水管のつまり。そして漏水。電気代も、なんだかおかしい。(現在使っていない動力の請求書が来る。) 築後30年余りの家は、父母による増改築・補修も、幾度となくもやってきたのだが、無理な増築による家の傾き及びサッシの開閉困難等、支障をきたす事も多くあったようである。「とりあえず、弟が暇なとき、平面だけでも描いてもらおうか!」それから本格的に進行したのである。
3.設計コンセプト
  下記に述べる条件及びコンセプトを持ちながら基本設計に着手した。
A.北側敷地に接している父母の住宅(特に南西側DK前)に現状より開放感を与え、日照及び緑の空間を持たせること。
B.同上父母の和風住宅とのバランス・連続性を考慮した洋風住宅とすること。(平成5年に私が手がけた住宅である。)
C.同上父母の独立住宅と内部水平空間的に連続させ、一体感を持たせること。(家は独立していてもコミュニケーションは保てるよう。)
D.同上父母の家の東側駐車場アプローチから独立させ、2台分駐車場を確保すること。(以前は一緒で出し入れが不自由だった。)
E.たたき台図面からは徐々に変わってきたが、あらかた間取りに関しての条件は下記の通りである。
 a.5人家族で子供3人は、独立させた部屋を持つこと。
 b.広いLDK(20帖以上)で、キッチンはアイランド型とすること。
 c.書斎は10帖程度とし、玄関〜便所のアプローチが他の居室を通らないで独立して使用できること。
 d.座敷はLDKと連続し、玄関〜便所のアプローチが他の居室を通らないで独立して使用できること。
 e.子供達のアプローチは玄関からでなく、勝手口から独立してでき、浴室に直接行けること。
 f.尚、子供室以外は、全て1階に設けること。
F.通風・採光等自然の利を考慮した健康で明るい家造りとすること。
G.コストに関しては、住宅金融公庫の枠内で充分確保できること。
H.そして何よりも、設計事務所を営む弟が、今まで蓄積したノウハウ及び感性を充分に発揮できる場を提供すること。
4.設計プローセス(設計着手から工事竣工まで)
ここでは、日付を追って、当社アヴニール設計の住宅設計(兄の家の設計の場を借りて)に関わる設計プローセスを紹介する。
T.基本設計
a.面談及びヒヤリング(聞き取り)。2/6/2000
一番最初の施主との打ち合わせである。
予算、家族構成、規模、趣味、趣向、ライフスタイルそしてイメージ等をここで聞き出す。
b.現地調査、周囲の状況及び法規チェック。2/7/2000〜2/15/2000
地積測量図等敷地の図面が有ればその確認、実施測量(実測)が必要な場合はここで行う。
スケッチをしながらイメージのコンセプトを煮詰め、たたき台(プレゼンテーション)に着手する。
c.たたき台図面提出及び打ち合わせ。2/16/2000
予算を考えた総2階プランと、できるだけ要望を考えた予算抜きのプランの2通りを準備した。
図面を説明しながら、コンセプト及び予算等の説明を行う。
もっとイメージを膨らませてもらうため、色々な提案を行い、繰り返しヒヤリングする。
d.たたき台図面から基本計画に移行。2/17/2000〜4/13/2000
施主の要望・規模又は平面計画により構造の決定・説明をする。
内外の仕上げ材料・設備・外構等を検討し概算工事費を算出・説明する。
施主のイメージがよりつかみやすいように、室内鳥瞰図・外観パース(線画)等によって説明する。
ここまでプランの練り直し及び基本計画図面の提出も6回。だいぶ構想も煮詰まってた。
タイミングを見て、模型・CG(コンピューターグラフィック)等でイメージの確認をする。
Dr.コパの風水による検討及び住宅金融公庫の資金診断システムによる総予算の検討を行う。
基本設計の完了!!と思ったのも束の間。
家相によると中庭が(重心がはずれる。)どうしても気になる。と言うことで計画はふりだしに。。。
中庭が、この家・家族の動線と要望を満たす大きなポイントだったのが、ネックになってしまった。
基本計画案
(中庭案)
e.基本計画の終了及び実施設計への移行を確認。4/13/2000〜4/26/2000
中庭を、玄関ホールに大改造。トップライトもふんだんに取り入れて、中庭に替わる空間を演出。
コスト面・全体平面計画面から考えたら、かえって良かったのかも知れない。。。。と思う。
外観のイメージはほぼ損なわないで済んだ。
施主も大きな問題が解決して大満足。           実施設計に移行することを了承。
基本計画
変更案
(吹抜ホール案)
ここに至るまで、多くの人がストレスもたまり、神経もすり減らします。考えれば考えるほど行き詰まったような錯覚に陥りますが、必ず解決できるものです。極端に言えば、施主の人生にも関わる大きな買い物です。変に妥協しないで、他とは違う我が家を持つ楽しみを一緒に考えていきましょう。
そして、できるだけ基本設計の段階で、要望・イメージを出し尽くして下さい。とことんお付き合いします。実施設計に移行しますと、図面の作成に専念し、こもってしまいます。設計の変更内容によっては、多くの時間と労力を失ってしまう場合がありますので特に御注意下さい。

f.母屋の日影の影響の確認。
(以前より明るく、庭先が広がることを確認)(母屋の両親にも確認)
冬至・南中時(12:00)の日影
広くなった庭先に花壇を設ける
解体後、束の間の母屋の全景。
上棟時、母屋の鳥瞰
U.実施設計     4/26/2000〜5/31/2000
実施設計とは、基本設計で描いた図面を、より専門的に書き加えた図面、仕様、、積算、見積等を言う。
作業の内容を簡単に説明すると次のような段階内容がある。
参考に、今回、兄の家で書いた図面枚数を右に示す。(A-3サイズ)計50枚
a.確認申請用図面
家を建てるのを、建築基準法その他関連法令と照らし合わせ、役所がチェック確認する図面。約7枚
必要図面種類
(木造2階建て)
配置図・附近見取り図
求積図・求積表(面積算定図面)
各階平面図・屋根伏図
筋交・軸組計算書
屎尿浄化槽構造図(必要に応じて)
配置図
平面図
b.住宅金融公庫用図面
住宅金融公庫による借入に対し、役所がその基準に適合しているかどうかチェックする図面。約3枚
必要図面種類
(a.に加えて)
立面図
矩計詳細図(建物の構造が解る断面図)
立面図
矩計(かなばかり)詳細図
(サンプル図面)
(サンプル図面)
c.工事用図面
仕様が決まっている工務店等が工事が無事完了するための技術的図面。約7枚
任意図面種類
(a.b.に加えて)
仕上表
各階伏図(基礎・木材等構造図)
(サンプル図面)
仕上表
小屋伏図
d.見積用図面
仕様が決まってない工務店等、不特定の施工業者が同じ条件で見積及び施工ができる図面。約17枚
仕様のグレード、メーカー名、品番及び納まり及び設置場所まで詳しく書かれた図面。
任意図面種類
(a.b.c.に加えて)
特記仕様書(図面に書ききれない部分を補う仕様書)
断面詳細図
平面詳細図
建具配置及び建具表(建具の姿、材質、金物を示す図面)
電気設備平面図
給排水・衛生設備平面図
空調・換気設備平面図
建具表
平面詳細図
(サンプル図面)
e.その他内容確認用図面
施工業者、施主等が、前a.〜d.では解りづらい部分を再確認するための図面。約16枚
任意図面種類
(a.b.c.dに加えて)
展開図
天井伏図
軸組図
外観イメージパース(線画)及びCG(コンピューターグラフィックス)
キッチン参考図
外構図
(サンプル図面)
天井伏図
展開図
f.積算及び設計見積
積  算 : 施工する面積、長さ、箇所数等を工種・材種別にそれぞれの数量を算出すること。
設計見積 : 積算及び下請負業者の見積を参考に単価を入れ工事予定金額を算出すること。 
現  説 : 工務店等施工業者に、現場の状況及び図面の内容を説明し、見積依頼すること。
施主から示された予算に合わせて実施設計を終了させるため、現説前までに、数量・金額を把握しておくことは非常に大事なことである。それを基に、工務店等施工業者の見積チェックを行い最終的にコストコントロールしていく。
g.施工業者の決定及び契約
最終金額及び工務店等施工業者の決定が済んだら工程・工期・支払条件を確認の上契約を結ぶ。
設計契約の内容によって、書く図面の種類及び費用も異なってきますが、工務店・下請け業者間及び施工業者・施主間において、図面による説明・再確認をしておけば、工事中におけるトラブル及び余分な出費も、できるだけ避けることができます。信頼した施工業者であっても、費用のことになれば、ピリピリして、そのままギクシャクした関係になる場合も多々見かけます。設計事務所に設計を依頼すれば、設計料が発生しますが、工事費・内容全体で考えれば、必ず良い結果が出せる確信を持ってます。我々は、施主が、平面図・立面図だけではイメージがつかめない建物の内容を、できるだけ伝わるよう、色々な説明・手法をその場に応じて考え、内容を具体的に図面・データ・模型等で表現していきます。
シミュレーション

CG(コンピューターグラフィックス)
外観竣工イメージ
東側
南側
西側
北側
鳥瞰
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